『コーヒーを 飲めぬ幼さ 知られじと つま先立ちの ほろ苦き恋』16歳 卯月

初めて男性とお付き合いした当時、私はまだコーヒーが苦くて飲めませんでした。でも時間だけでなく、彼と同じ味と香りを共有したくて、私は喫茶店でコーヒーを頼みました。

コーヒーはなかなかカップから減りませんでしたが、コーヒー特有の芳醇な香りに包まれて、とろけるような気持ちであっという間に時が過ぎたものです。「コーヒールンバ」という曲があるくらいですから、私の気持ちを加速させる一因になったのかもしれません。

 

人間は外界の情報の7~9割を視聴覚に頼っているといいますが、香りは「見る」「聞く」という行為よりももっと深い部分で、人の心を揺さぶる不思議な力を持っているのではないでしょうか。

 

ブラックコーヒーの苦味に慣れきらないうちに、進学やタイミングのずれなどの理由で私たちは会うことはなくなりました。

 

大学生になり、授業やレポート作成、バイトや遊び、飲み会と様々な経験を積むうちに、コーヒーは私の日常にとって、必要不可欠なものになっていきました。社会人になってからもそうでしたが、集中力を高める上で、大いに役立ってくれたものです。

 

時は経ち、仕事で疲れ果てていたある日、アロマオイルで全身をマッサージしてくれるサロンに行く機会に恵まれました。

 

どの精油を使うか決める際に何種類もの香りを嗅ぐのですが、そのままでは鼻が慣れ、匂いが混じってどれを選べばよいのか分からなくなります。それを防ぐためにセラピストが、精油を嗅ぐ度にコーヒー豆の匂いを嗅がせてくれました。その都度嗅覚がリセットされて私は好きな香りを選び、心地よいマッサージを受けることが出来ました。

 

コーヒーにはそんな役割もあったのですね。

 

アロマというと精油の事などが先に頭に浮かびますが、コーヒーの香りも私たちを癒し、元気づけてくれる身近なアロマといえるのではないかと私は思います。

 

過ぎし10月1日は国際コーヒーの日。

飲料としてのコーヒーの普及を促進し、祝典を行う記念日だそうです。

 

『もう会えぬ 君の教えし コーヒーの 香に包まれる ある秋の朝』30代 神無月

 

 

「お元気ですか?

落ち込んだりもしたけれど、コーヒーを傍らに、今日も私は元気です。」